コーポレートカードの個人決済型とは?利用のメリットとデメリットを解説!
大企業向けの法人カードであるコーポレートカードの中には、決済方法を「法人決済型」と「個人決済型」の両方から選べるものがあります。
会社で発行する法人カードなので「法人決済型」はイメージしやすいと思いますが、「個人決済型」についてはどのように利用するのか分からない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、コーポレートカードの決済方法の違いや、個人決済型を選ぶメリットとデメリット、個人決済型を選べるコーポレートカードを紹介します。
コーポレートカードの決済方法で迷っている方や、個人決済型のコーポレートカードを導入したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
監修者
加藤英俊
ファイナンシャルプランナー2級(AFP)を保持。FP宮崎支部に所属。経理実務や財務会計などの実務経験が20年以上あり、経験を生かした企業内FPも実施。ファイナンシャルプランナー資格と実務経験により、企業会計に強い。
プロフィール:https://hidetoshi1967.com/
コーポレートカードとは
コーポレートカードは、主に大企業向けに発行される法人カードです。
通常の個人向けクレジットカードより利用額が大きくなる一方、カード会社の審査も厳しくなります。
ここでは、コーポレートカードの特徴と市場の関係などについてお伝えします。
コーポレートカードの特徴
大きな特徴は、法人カードの発行枚数の上限が多いこと。
複数の部署や社員に発行することで事業経費のための現金のやり取りがなくなり、ビジネス面で経理業務の効率化や簡略化などに繋がるメリットがあります。
特に、リモートワークの普及やペーパーレス化の求められる中、コーポレートカードのメリットによりこれからの仕事の取組みにも影響が出てくると予想されています。
個人向けカードの市場は飽和状態
クレジットカード会社の発行する個人向けカードは飽和状態になりつつあるため、クレジットカード会社は法人向けのコーポレートカードの営業を行うようになりました。
コーポレートカードであれば、社員が所持する個人向けカードと関係なく枚数を多く発行できるため、クレジットカード会社には利用額を増やせるメリットがあります。
また、コーポレートカードは法人口座から引き落とす「法人決済型」が基本となりますが、個人口座から引き落とす「個人決済型」も利用できます。
詳しくは、次の項目で紹介します。
コーポレートカードの決済方法は2種類
コーポレートカードは、決済方法を「法人決済型」「個人決済型」の2種類から選べる場合が多いです。
はじめに、この2種類の支払い方法の違いについて解説します。
法人口座から引き落としされる法人決済型
法人決済型(会社決済型)は、コーポレートカードの利用代金が法人口座から一括で引き落とされる決済方法です。
複数の部署や社員にコーポレートカードを持たせていたとしても、法人カードの利用代金は全て会社の法人口座からまとめて引き落とされます。
そのため、ビジネスでの出張時の宿泊費や交通費、接待費など経費の立替払いの手間が省け、さらに経費を処理する経理部門や資金繰りなどを処理する財務部門での業務効率化に繋がるというメリットがあります。
ただし、利用代金は法人口座からの引き落としになるため、法人カードを所有する社員がプライベートな支払いに利用することはできません。
法人決済型は、「ビジネスでの経費利用にのみコーポレートカードを活用したい」という会社におすすめの決済方法です。
個人口座から引き落としされる個人決済型
個人決済型は、実際にコーポレートカードを持っている個人の口座から利用代金が引き落とされる決済方法です。
支払いは個人のお金を使うことになるため、コーポレートカードをプライベートで限度額の枠内で利用しても構いません。
ビジネス用のクレジットカードとプライベートのクレジットカードを分ける必要がないため、コーポレートカードが1枚あれば便利に使えるでしょう。
経費利用した分は後ほど会社に申請をし、会社の経費清算の手順に従い清算します。
コーポレートカードによっては経費利用した分のみを法人口座で一括引き落としできるのものもあります。
個人決済型は、「私用でプライベートにも使える法人向けコーポレートカードを発行したい」という会社におすすめの決済方法です。
監修者コメント
個人決済型も積極的に活用してみましょう
個人決済型のカード利用は、クレジットカード会社の広告宣伝が少ないこともあり認知度も低いようです。
通常のクレジットカードの需要が飽和状態にある現在、個人決済型の利用が普及すれば、クレジットカード会社の販促に繋がります。
個人決済型の需要が高まれば、さらなる新サービスの期待が持てます。
個人決済型を選ぶメリット3選
個人決済型のコーポレートカードを利用するにあたり、メリットとデメリットが両方あります。
同じ法人向けカードとはいえ法人決済型と特徴が異なるため、メリットとデメリットをそれぞれを踏まえた上で、自分の会社で個人決済型を選ぶべきなのか検討しましょう。
ここでは、個人決済型のコーポレートカードのメリットを3つ解説します。
- プライベートでも利用できる
- 従業員の福利厚生になる
- グレードの高いカードを利用できる
プライベートでも利用ができる
個人決済型のコーポレートカードの大きなメリットは、ビジネスとプライベートの両方で利用できることです。
法人決済型の法人カードは、利用代金が会社の法人口座から引き落とされるため私的利用はできません。
もし会社のお金を使って私的利用をしてしまうとトラブルになったり、返金処理などの手間がかかるでしょう。
一方で、個人決済型のコーポレートカードは、利用代金が個人の口座から引き落とされるため、プライベートの個人的な支払いにも問題なく利用することができます。
会社の経費のみ後から支払う形なので、会社のお金を勝手に私用されるリスクもなく、社員個人としても利用するメリットのある決済方法といえるでしょう。
従業員の福利厚生になる
コーポレートカードの年会費は会社の経費となるため、社員にコーポレートカードを発行することで会社の福利厚生として活用できます。
コーポレートカードに限らず、クレジットカードには空港ラウンジの利用特典や海外旅行保険、レジャー施設の優待、各ポイントなどのさまざまな特典が付帯されています。
しかし、これらのサービスの中には、カードを利用しないと受けられないものも少なくありません。
個人決済型のコーポレートカードは、法人カードであるとともにプライベートでも利用できるため、これらのサービスを最大限に活用できるでしょう。
グレードの高いカードを利用できる
個人決済型のコーポレートカードは会社の信用のもと、審査に合格した社員も利用できる特徴があります。
会社の契約するコーポレートカードの利用限度額は、個人向けクレジットカードより大きくなることが多いです。
そのため、個人で利用しているクレジットカードより、限度額に応じたグレードの高いカードを利用できる可能性があります。
グレードが高くなると付帯するビジネスでのサービス充実を見込めるため、コーポレートカード保持者の利用度やグレードの高いコーポレートカードを所持でき、満足度も向上することでしょう。
デメリット3選
個人決済型のコーポレートカードのメリット3つを解説してきました。こちらでは、デメリットを3つ解説していきます。
- 経費管理が面倒になる
- 審査に個人の信用情報が関わる
- 審査に不合格だと人事に影響する可能性がある
経費管理が面倒になる
個人決済型のコーポレートカードには、経費精算の手間がかかるというデメリットがあります。
先ほど個人決済型のコーポレートカードのメリットとして、ビジネスばかりでなくプライベートでも利用できる点をあげました。
しかし、コーポレートカードを会社の経費支払いに利用した場合は、社員が会社に経費申請をしなければなりません。
法人決済型であればコーポレートカードでの支払いは基本的に全て会社の経費になるため、このような処理が必要なく経理管理は楽になります。
個人決済型のコーポレートカードは、プライベートでも利用できるメリットがある一方で、経費の処理に手間がかかるデメリットもあることを理解しておきましょう。
審査に個人の信用情報が関わる
個人決済型のコーポレートカードの審査には個人の信用情報が関わるため、人によってはデメリットになってしまう可能性があります。
会社決済型のコーポレートカードの審査には会社の業績や信用情報などが重要視されるため、実際にコーポレートカードを持つ社員の信用情報に関わらず法人カードを発行することが可能です。
一方で、個人決済型のコーポレートカードは、申し込みの際、審査の対象に実際に法人カードを持つ社員の情報も関わるため注意が必要。
そのため、実際に法人カードを利用する個人の信用情報が悪い場合には審査に落ちてしまう可能性があるのです。
審査に不合格だと人事に影響する可能性がある
個人決済型の審査に不合格となった場合は、不合格の連絡が会社に届きます。
審査に不合格となった理由を伝えられることはありませんが、自己破産や借入金の過大さによるものだと、人事での評価に影響を与える可能性があります。
お金を扱う経理や財務、店舗部門や集金をともなう部署では、金銭に問題のある社員を配置することは避けられる傾向にあります。
審査に不合格となったことを原因に、人事異動による配置換えの対象となるかもしれません。
また、個人的な金銭問題で社員の懲戒処分を行うと法律面で問題が出てくるため、会社の人事としては要注意人物として注視することも必要になってきます。
監修者コメント
個人決済型のメリット・デメリットを把握しましょう
個人決済型のコーポレートカードを利用できれば、法人決済型より個人で利用できるビジネス面でのメリットが多く、会社の満足度も向上することでしょう。
一方、個人決済型には経理面での煩雑さはもとより、審査に不合格となった場合の信用面でのデメリットを予め把握しておく必要があります。
個人決済型を選べるコーポレートカードを紹介
最後に、個人決済型を選べるおすすめのコーポレートカードを紹介します。
個人決済型のコーポレートカードを導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
三井住友コーポレートカード
三井住友コーポレートカードは、年会費が安いためコストを抑えたい会社におすすめの法人カードです。
決済方法は、個人決済型と法人決済型から選べます。
一般カードとゴールドカードの2種類のランクがあり、一般カードの年会費は1会員目が1,375円 (税込)、以降1会員につき440円 (税込)で上限額33,000円 (税込)です。
追加カードにかかる年会費の上限額が定められているため、たくさん発行した場合でもコストを低く抑えることができます。
ただし、アスクルサービス、レンタカーサービスなど一部のビジネスサービスは個人決済型の場合対象とはなりません。
利用できるビジネスサービスを見比べて、どちらの支払い方法を選ぶか良く検討しましょう。
アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カード
アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カードは、個人決済型と法人決済型のほかに、「個別請求・一括支払方式」と呼ばれる決済方法が選択できるのが大きな特徴です。
「個別請求・一括支払方式」は、カードの所有者ごとに届く明細書を元に経費精算をし、経費分のみを会社が一括で支払うという決済方法です。
一般的に個人決済型を選んだ場合は、あとで社員個人に払い戻しをしなければなりませんが、その手間が省けとても便利な決済方法といえるでしょう。
ステータスが高い法人カードでもあるため、ステータスを重視したビジネスカードを持ちたい場合におすすめです。
UCコーポレートカード
UCコーポレートカードも、個人決済型と法人決済型から決済方法が選べる法人向けビジネスカードです。
年会費は、発行条件等により個別で設定されます。
UC福利厚生サービスや、JALオンラインサービス、タクシーチケットなどビジネスに役立つサービスが多く付帯されています。
一般ランクのカードには保険が付帯されていないため、旅行傷害保険やショッピング補償保険が必要であれば、ゴールドカードを選ぶと良いでしょう。
ETCカードの年会費が無料で複数枚発行できるため、社用車を多数所有している企業にもおすすめです。
監修者コメント
カードごとの特徴を確認してみてくださいね
個人決済型は法人向けのコーポレートカードのため、個人向けカードより充実した独自のビジネスサービスをクレジットカード各社が提供しています。
こちらで紹介しました個人決済型のカードにはそれぞれ特徴があり、利用する目的や経費面でのメリットを考慮し選択することをおすすめします。
まとめ
今回は、コーポレートカードの決済方法について解説しました。
個人決済型のコーポレートカードはプライベートでも利用できるという大きなメリットがある一方で、法人決済型カードと比べ経費清算の手間が必要になるなどのデメリットもあります。
どちらの決済方法を選ぶか比較検討した上で、コーポレートカードの導入しましょう。