法人カードは限度額不足に注意する!引き上げ方法もあわせて解説!
経費を支払いしたい時に一枚持っておくと便利なのが法人カードです。
会計ソフトなどのビジネスサービスを付帯する法人カードが多いため、日頃の経理業務の効率化が期待できます。そんな法人カードを作る時に重要なポイントとなるのが限度額です。
もし、限度額が足りない場合、他の方法で支払いしないといけません。
本記事では限度額のしくみ、足りない時の引き上げ方法などについて解説していきます。法人カードはいくらの限度額が適切なのか気になるという方も、本記事を参考にしてください。
法人カードはどんなしくみ?
個人向けクレジットカード同様、法人カードにも限度額というしくみが備わっています。どんなしくみなのか、気になる方は次をご覧ください。
法人カードで支払いできる金額
法人カードで支払いできる金額は限度額内までです。あらかじめ設定された限度額を超える支払いはできません。法人カードでは、次のような利用可能枠を用意しています。
- 総利用枠
- ショッピング利用可能枠(オフィス用品の購入、交通費や接待費の支払いなど)
- かっぷ枠(分割やリボなどを利用できる枠)
- キャッシング利用可能枠(お金を借りる枠)
それぞれの利用可能枠はお互いに関係しあっています。次に利用可能枠の例をあげて、関係性を説明してみましょう。
- 総利用枠100万円
- ショッピング利用可能枠100万円
- かっぷ枠70万円
- キャッシング利用可能枠30万円
かっぷ枠はショッピング枠に含まれるのが一般的です。注意したいのがキャッシングした時のショッピング利用可能枠への影響です。
上記の例だと30万円のキャッシングで、ショッピング利用可能枠の残りが70万円へ。ショッピング利用可能枠、キャッシング利用可能枠、両方含めて100万円までとなるのが総利用枠のしくみです。
法人のみを対象とする法人カードはショッピング利用可能枠のみ、キャッシング利用可能枠なしが一般的。支払方法は1回払いだけ、分割やリボのない法人カードも多いです。
法人代表者や個人事業主を対象とする法人カードでは、キャッシング利用可能枠あり、分割やリボも選べるものが見られます。
作成を検討している法人カードにはどの利用可能枠が付いているのか、事前に確かめてから申し込みしたほうが良いでしょう。
追加カードの限度額は本カードとの共有
法人カードでは、複数の従業員に追加カードを持たせるといったケースがよく見られます。
従業員に追加カードを持たせると、経費処理にかかる手間とコストの節約が期待できるのが魅力。しかし、限度額は本カードと追加カードで共有となります。
追加カードの発行枚数が多いほど、一人あたりの限度額が少なくなるため注意が必要です。
従業員に追加カードを持たせた時は限度額が不足しないよう、交通費だけ接待費だけなど使いみちに制限をかけると良いでしょう
減った限度額は支払いが完了すれば元に戻る
法人カードは「会員」「カード会社」「加盟店」の3者が関わっています。
「会員」が法人カードを利用した後、「加盟店」に立て替え払いを行うのが「カード会社」です。「会員」は立て替え払いした「カード会社」へ支払いします。
減った限度額が元に戻るのは「カード会社」への支払いが完了した時です。法人カードは限度額内なら、繰り返し支払いできるしくみになっています。
限度額はいくらが適切?
法人カードの利用代金は、
- 「法人名義の口座」
- 「個人名義の口座」「個人事業主名口座」
より自動引き落としされます。
締日に確定した利用代金が、翌月の支払日に口座引き落としとなるのが基本です。
締日と支払日のしくみがある関係上、1ヶ月から2ヶ月ほど支払いを先に伸ばせるためキャッシュフローの改善が期待できます。法人カードの限度額はいったいいくらが適切なのでしょうか。
限度額は1ヶ月あたりの支払額×2以上
法人カードの限度額を考える時に大切なのが1ヶ月あたりの支払額です。1ヶ月あたりの支払額が多いと、不足する可能性があります。
限度額100万円の法人カードの場合、
- 前月60万円の支払いで残りの限度額40万円
- 今月60万円の支払いで限度額20万円の不足
という事態になるため、不足した20万円分の支払いをどうするのか考えないといけません。
そのため、限度額は「1ヶ月あたりの支払額×2以上」は欲しいところです。上記の例だと、限度額120万円以上が適切となります。
ただし、「1ヶ月あたりの支払額×2」ギリギリだと想定外の出費があった時に限度額が不足しかねません。法人カード申し込み時には、余裕のある限度額を希望したほうが良いでしょう。
ランクの高い法人カードほど限度額が高い
法人カードのランクが高いほど、限度額が高くなる傾向があります。ランクごと限度額の目安は次のとおりです。
法人カードのランク | 限度額の目安 |
---|---|
法人一般カード | 最大100万~150万ほど |
法人ゴールドカード | 最大300万ほど |
法人プラチナカード | 最大500万ほど |
1ヶ月あたりの支払額が多い方は限度額の高い法人ゴールドカード、または法人プラチナカードを作りたいところです。
限度額はどうやって決まる?
法人カードの限度額は審査によって決まるしくみになっています。ランクの高い法人カードほど、審査が厳しくなるのが基本。限度額に影響しやすい主な項目は次のとおりです。
収入や事業歴
得ている収入は多いほど、設定される限度額が高くなる傾向があります。年収に対する限度額の目安は次をご覧ください。
年収 | 限度額の目安 |
---|---|
100~200万円 | 10~50万円 |
200~300万円 | ~100万円 |
300~500万円 | ~150万円 |
500~1000万円 | ~300万円 |
事業歴は長いほど高い限度額が設定されやすいです。会社設立から3年以上の事業歴が新規作成の目安となります。事業歴が短い方は、会社設立したばかりでも作成できる法人カードへ申し込みすると良いでしょう。
クレジットカードの履歴
クレジットカードの履歴が優良なほど、高めの限度額が設定されやすいです。支払いが良好な履歴なら問題ないですが、金融事故がある時は問題が発生します。
主な金融事故は、
- 長期延滞(61日以上・3ヶ月以上)
- 破産(支払不能のため支払いすべて免責)
- 代位弁済(保証会社や保証人が弁済)
などがあります。
金融事故が登録されるのが信用情報です。カード会社が信用情報に照会をかけた際に、金融事故の過去があるとすぐに分かります。金融事故の経験がある方は、信用情報から削除されるまで申し込みを控えましょう。
※限度額や審査通過の判断はカード会社によって異なります。あくまでも目安のため、参考程度にしてください。
限度額の引き上げ方法
法人カードの新規発行時は、低めの限度額が設定されやすいです。限度額が足りない時は、次の方法で引き上げが可能。
自然な増額
法人カードで優良な支払いを続けていると、限度額が自然に引き上げされることがあります。審査は新規発行時だけではなく、契約中にも行う場合が多いです。契約中に行うものを途上与信と呼んでいます。途上与信の結果、信用力が上がったと判断されると自然に増額されやすいです。
自分から増額を希望する
自然な増額の他、自分から増額を希望できます。申請方法はカード会社によって異なりますがインターネット、または電話が多いです。申請後の審査に通過すれば、限度額が引き上げされます。
また、法人カードによっては一時的な増額も可能です。一時的な増額ではいったん引き上げされますが、一定期間過ぎると以前の限度額に戻ります。一時的な増額は比較的認められやすい上に、急な出費時にも対応しやすいのがメリットです。
各社の法人カードを比較
法人カードの限度額がいくらなのか気になるという方は、次の比較表をご覧ください。
法人カード名 | 限度額 |
---|---|
uc法人カード一般 | 最大300万円 |
uc法人カードゴールド | 最大500万円 |
オリコ ビジネスカード スタンダード |
最大1000万円 |
オリコ ビジネスカード ゴールド |
最大1000万円 |
三井住友 ビジネスカード(一般) |
最大150万円 |
三井住友 ビジネスカード(一般) |
最大150万円 |
三井住友 ビジネスカード(ゴールド) |
最大300万円 |
三井住友 ビジネスカード(プラチナ) |
最大500万円 |
三井住友 ビジネスカード for Owners(一般) |
最大150万円 |
三井住友 ビジネスカード for Owners(ゴールド) |
最大300万円 |
三井住友 ビジネスカード for Owners(プラチナ) |
最大500万円 |
JCB一般法人カード | 最大100万円 |
JCBゴールド法人カード | 最大250万円 |
JCBプラチナ法人カード | 150万円~ |
ライフカード ビジネススタンダード |
最大500万円 |
ライフカード ビジネスゴールド |
最大500万円 |
uc法人カード一般は最大300万円、他社の法人ゴールドカード並みの水準です。uc法人カードゴールドなら、法人プラチナカード並みの水準となっています。
オリコビジネスカードでは、スタンダードでも最大1000万円です。ただし、1000万円の限度額は高い信用力が要求されるでしょう。
三井住友ビジネスカードの限度額は一般的な水準です。しかし、三井住友ビジネスカード for Ownersでは個人事業主の方でも申し込みできます。キャッシング利用可能枠も備わっているため、借入したい個人事業主の方にも便利。
JCBプラチナ法人カードの限度額は下限で150万円です。新規発行時でも150万円以上が設定されます。信用力しだいとなりますが、高額な限度額も期待できる法人プラチナカードです。
ライフカードビジネススタンダードは、年会費無料なのに最大500万円と高額。相談により500万円以上の限度額も期待できます。ライフカードビジネスゴールドはスタンダードと同じ最大限度額ですが、法人ゴールドカードでも年会費2,000円(税抜)と格安です。
一律の限度額がないビジネスカード
アメリカン・エキスプレスでは、
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
といったビジネスカードを用意しています。
法人カードでは最高100万円・300万円・500万円など、一律の限度額を設けるのが一般的です。しかし、アメリカン・エキスプレスのビジネスカードには、一律の限度額がありません。
ただし、一律なしとはいえ無制限ではありません。信用力を判断し、会員個別で設定するしくみになっています。信用力が高い方は個別の限度額が高くなり、信用力が低い方は個別の限度額が低くなるでしょう。
事前承認手続き
アメリカン・エキスプレスのビジネスカードでは、事前承認手続きによって一時的な限度額の引き上げが可能です。事前承認は電話で受け付けしていますので、不足しそうな時はアメリカン・エキスプレスの係員に相談すると良いでしょう。
事前入金
また、アメリカン・エキスプレスのビジネスカードでは事前入金(デポジット)というサービスも利用できます。入金した分だけ限度額が引き上げされるというサービスです。単純に計算すると「元の限度額100万円+事前入金100万円=引き上げ後の限度額200万円」となります。
大きな金額を事前入金すれば、高額な法人カード決済が可能です。一般的な増額申請と違い、事前入金ならすぐに認められるでしょう。事前入金した分にもポイントが貯まるため、現金払いするよりお得です。
ただし、アメリカン・エキスプレスのビジネスカードは、
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カードで年会費12,000円(税抜)
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードで年会費31,000円(税抜)
と比較的高めの設定となっています。
まとめ
法人カードでは、限度額によって上限が設けられています。100万円の限度額なら、法人カードで支払いできるのは100万円までです。
この場合、50万円法人カードで支払いすると残りの限度額が50万円となりますが、支払いが完了しだい元の100万円の限度額に戻ります。
事業が成長して1ヶ月あたりの支払額が増えてきたら、法人カードの限度額が不足しないうちに引き上げてもらうと良いでしょう。
ただし、増額審査に落ちてしまうと限度額は引き上げされません。
不足した限度額を補うため、2枚目の法人カードを作る方法がありますが経費処理が複雑になる恐れがあります。
そのため、なるべく限度額の高い1枚の法人カードで経費を支払いしたいところです。
限度額不足が気になる方には、事前入金で限度額に柔軟性のあるアメリカン・エキスプレスのビジネスカードもおすすめ。