基礎知識
法人カードの仕訳はどうするべき?知っておきたい会計・経理処理のルール

法人カード支払いの会計処理・仕訳方法を徹底解説!

会社の経費管理に法人カードを導入しようと考えている経営者の方、もしくはこれから導入を検討している経営者の方は多いでしょう。

カード一枚で面倒な経費管理を一元化でき、経理処理の手間を減らすために大きく役立つ法人カードですが、利用した際の経理処理に注意しなければいけません。

法人カードでの支払いは、場合によっては現金での経費支払いをする時と仕訳方法を変えなければいけません。事前に仕訳方法を知っていなければ、確定申告の際にかえって手間が増えてしまいます。

今回は、法人カードを利用した際の仕訳方法について解説。分割払い・リボ払いなどの際の仕訳方法についても紹介していきます。

経営者の方や、社内の経理処理を担当する方はぜひチェックしてください。

法人カードの仕訳は「白色申告」と「青色申告」で異なる

法人カードを利用して会社の経費となるものの支払いをした際には、仕訳を行う必要があります。

その際、確定申告の際に「白色申告」をするか「青色申告」をするかで仕訳の方法が異なる点に注意が必要です。

自分の会社がどちらの方法で確定申告を行っているのか確認のうえ、それぞれの方法を見ていきましょう。

白色申告の場合の仕訳方法

確定申告を「白色申告」で行っている場合には、仕訳の方法は非常に簡単です。

たとえば、10月10日に、会社の備品として1,000円分のコピー用紙をカード払いで買ったとしましょう。

その場合の帳簿の付け方は、下記のようになります。

日付 収入 支出
10月10日 消耗品費 1,000円

単純に、法人カードを使用した日付と、支払った金額を支出の欄に記入すればよいだけ。取引をした日(法人カードを使用した日)をそのまま書くだけなので、シンプルですね。

青色申告の場合の仕訳方法

次に青色申告についてですが、青色申告の場合には「複式簿記」という方法で記入をしなければいけません。そのため、白色申告よりも少し手間がかかります。

複式簿記の場合、帳簿は「借方」と「貸方」に分けて記入しなければいけません。

借方には資産の増加や費用の発生を計上する側、貸方には負債や純資産の増加、または収益の発生を記載していくのが基本です。

経理処理を担当している方であれば記載方法はご存知だと思いますが、不安な方は税理士などに相談しましょう。

さて、では実際に青色申告で法人カードの経費支払いを記入する書き方ですが、先程と同様に、10月10日に会社の備品として1,000円分のコピー用紙をカード払いで買った場合は下記のようになります。

日付 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
10月10日 消耗品費 1,000 未払い金 1,000

青色申告の場合、法人カードを利用したその日は金額を「未払い金」として仕訳をする必要があります。つまり、カードの支払いが実際に行われるまでは、購入金額は未払いとして処理するのです。

そして、カード会社ごとに決まった利用料金引き落とし日に改めて未払金を払った旨を帳簿に記載します。

ここでは、カード料金が翌月の27日に引き落とされると仮定しましょう。その場合、帳簿は下記のとおりに記載します。

日付 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
11月27日 未払い金 1,000 普通預金 1,000

このように、青色申告の場合には「法人カードを利用した日」と「実際に利用料金が引き落とされた日」の2回に渡って帳簿に書き記す必要があります。仕訳に少し手間がかかるため、注意しましょう。

なお、10月に何度かに渡って法人カードを利用した場合には、利用料金の総額をまとめて11月27日の借方・貸方の金額に記載して問題ありません。

分割払い・リボ払いの経理処理の方法

ここまで、「白色申告」「青色申告」に分けて法人カードの仕訳の方法を解説してきました。

白色申告の場合にはカードを利用した日にそのまま記入、青色申告の場合はカードを利用した日・料金が引き落とされる日の2回に渡って記入が基本です。

ただし、これは法人カードを「一回払い」で利用した場合。分割払いやリボ払いなど、数回に分けて利用料金が引き落とされる場合には、また仕訳の方法が変わります。

そもそもリボ払いや分割払いができる法人カードはあまり多くありませんが、もし利用することがあれば、きちんと仕訳を行うようにしましょう。

分割払い・リボ払いは引き落としの度に記入する

法人カードで分割払いやリボ払いを選択した場合、利用料金の引き落としが分割されて行われるため、未払金の支払いが数回に渡って行われるということになります。

そのため、帳簿にも分割で支払う回数分だけ記入する必要があります。また、支払いの際に発生する支払手数料も同じく記載しなければいけません。

例として、10月10日に100,000円するオフィス家具を2回の分割払いで支払ったとしましょう。支払手数料は300円とし、引き落とし日は翌月27日とします。

この場合、仕訳は下記のとおりになります。

日付 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
10/10 消耗品費 100,000 未払い金 100,000
11/27 未払い金 50,000 普通預金 50,000
11/27 支払手数料 300 普通預金 300
12/27 未払い金 50,000 普通預金 50,000
12/27 支払手数料 300 普通預金 300

分割払い・リボ払いの際には、この様に引き落としの度に記入しなければいけないことを忘れないようにしましょう。また、支払手数料もしっかり記入しなければ、経費として計上することができないため注意して下さい。

キャッシングを利用した場合の経理処理の方法

次に、キャッシングを利用した際の仕訳の方法を見ていきましょう。

法人カードの中には、キャッシングを利用して現金を用意できるものがあります。その場合も、帳簿への記入が必要なので、忘れずに行いましょう。

例として、10月10日に500,000円のキャッシングを行ったとしましょう。キャッシング利用の手数料は300円、利用料金の引き落としは翌月27日とします。

日付 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
10/10 現金 500,000 短期借入金 500,000
11/27 短期借入金 500,000 普通預金 500,000
11/27 支払手数料 300 普通預金 300

キャッシングの仕訳では、借方の勘定科目を「現金」とし、貸方の勘定科目を「短期借入金」とします。

なお、短期借入金は、借り入れる期間が1年以内の場合に設定できます。しかし、3年以上など長期の借り入れになる場合には「長期借入」という勘定科目を設定しましょう。

キャッシングを利用できる法人カードもあまり多くはありませんが、もし利用する場合には仕訳方法を確認のうえしっかり会計処理を行って下さい。

法人カードなら利用明細を経費領収書代わりにできる

社内の経費支払いを確定申告で経費計上するためには、支払いの際に発行される領収書が必要です。

よくありがちなのが「領収書を失くしてしまい経費計上ができない」もしくは「領収書を受け取り忘れてしまった」というケース。

しかし、法人カードの場合には、月々の利用明細を領収書の代わりとして用いることができます。カード会社の会員専用ページから過去にさかのぼって印刷することができるため、領収書をなくしてしまい経費計上できないというケースを防ぐことができます。

ただし、さかのぼれる月数・年数には制限があるため、事前にしっかり確認のうえ、定期的に明細を出力しておくようにするのがおすすめです。

まとめ:法人カードの仕訳方法を知って正しく処理しよう

今回は、法人カードでの支払いに関する仕訳・会計処理について解説してきました。

仕訳の重要なポイントをまとめると、下記のとおりです。

  • 白色申告で確定申告を行っている場合は、法人カードを利用した日と金額をそのまま帳簿に記入する。
  • 青色申告で確定申告を行っている場合、法人カードを利用した日・利用料金が引き落とされる日の2回に渡って帳簿に記入する・
  • 分割払い・リボ払いの場合、支払いが行われる回数に渡って帳簿に記入する。

法人カードの仕訳は、一見複雑なように見えますが、一度やり方を覚えてしまえばその後は同じルールに従えば良いだけです。最初にしっかりと仕訳方法を把握して、確定申告に望むようにしましょう。

もし不明点がある場合には、会社で依頼している税理士などに聞くことをおすすめします。間違った方法で仕訳を行うと、後でまた手間がかかる可能性もあるため、早めに相談してみてくださいね。